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住戸と駐車場で修繕積立金の額が違うのはなぜか ~ 理事が読む規約の条文

2026-10-26

私が暮らすマンションには、地下に駐車場があります。共用部分ではなく、専有部分の駐車場です。

この駐車場には、住戸部分とは別に管理費と修繕積立金の額が設定されてきました。住戸は住戸、駐車場は駐車場。理事になるまで、その違いを気にしたことはありませんでした。

でも、長期修繕計画や修繕積立金の改定に関わると、必ずこの区画に行き当たります。住戸と同じ単価にそろえるべきなのか。別の額のままでいいのか。そもそも、その額は何を根拠に決まっているのか。

1階に店舗や事務所があるマンションも同じ問いを抱えています。この記事では、住戸以外の区画(店舗・事務所・専有部分の駐車場など)があるマンションで、修繕積立金の負担が何で決まっているのかを、法律、標準管理規約、自分の組合の規約の順に整理します。最後に、総会資料での見せ方に触れます。

なお、ここでいう駐車場は専有部分の駐車場です。敷地の駐車場を使用料を払って借りる形とは別の話です。

法律の原則は床面積の割合

出発点は区分所有法です。共用部分の負担について、19条はこう定めています。

各共有者は、規約に別段の定めがない限りその持分に応じて、共用部分の負担に任じ、共用部分から生ずる利益を収取する。

その「持分」は、14条1項で決まります。

各共有者の持分は、その有する専有部分の床面積の割合による。

原則は、専有部分の床面積の割合です。住戸でも駐車場でも、広さに応じて負担する。これが法律の初期設定です。

ただし、19条には「規約に別段の定めがない限り」とあり、14条4項も規約で別の定めができるとしています。住戸と住戸以外の区画で負担の割合を変えることは、法律が規約に委ねている事柄です。

一方で、30条3項は、規約を区分所有者の間の利害の衡平が図られるように定めることを求めています。考慮する事情として、専有部分や共用部分の形状、面積、位置関係、使用目的、利用状況などが挙がっています。

つまり、住戸と駐車場で額が違うなら、法律の仕組みの上では、その根拠は規約か、規約に基づく総会の決議に求めることになります。そして規約の定めには、この衡平の考え方がかかります。

標準管理規約は財布を分けている

国土交通省は、管理規約のモデルとして「マンション標準管理規約」を示しています。種類は単棟型・団地型・複合用途型の3つです。あくまでモデルで、各組合の規約そのものではありません。

住居だけのマンションを想定した単棟型は、管理費と修繕積立金の額を「各区分所有者の共用部分の共有持分に応じて算出する」としています(25条2項)。法律の原則どおり、床面積の割合です。

低層階に店舗がある建物を想定した複合用途型は、作りが違います。

  • 全体管理費・全体修繕積立金(25条): 建物全体の共用部分のための費用
  • 住宅一部管理費・住宅一部修繕積立金、店舗一部管理費・店舗一部修繕積立金(26条): 住戸部分だけ、店舗部分だけが使う共用部分のための費用
  • 全体の費用は、住戸部分のための費用と店舗部分のための費用に「あらかじめ按分」してから、それぞれの共有持分に応じて割る(25条2項)
  • 按分は、費用の項目ごとに費用が発生する原因を考えて振り分けるのが適当(同規約のコメント)

複合用途型のモデルの中心にあるのは、単価に差を付けることより、財布を分けることです。住戸だけが使う廊下やエレベーターの修繕は住戸側の財布から、店舗だけが使う入口の修繕は店舗側の財布から出す。区分所有法も、一部の区分所有者だけが使う共用部分(一部共用部分)を、それを共用すべき区分所有者の共有としています(11条1項ただし書)。

長期修繕計画作成ガイドラインのコメントも、複合用途型マンションをガイドラインの対象から外したうえで、全体と住宅一部・店舗一部の範囲や費用負担のあり方を考慮する必要があるとしています。

なお、複合用途型のモデルは店舗を想定しています。専有部分の駐車場を同じように扱うか、住戸と同じ財布で単価だけを変えるかは、組合ごとの規約次第です。

自分の組合の規約で確かめる場所

モデルを読んだら、次は自分の組合の規約です。住戸以外の区画の負担がどう決まっているかは、次の場所で確かめられます。

  • 管理費等の条文: 「共有持分に応じて」だけか、住戸部分と住戸以外の区画を分けて書いているか
  • 共有持分の別表: 住戸以外の区画が号室と並んで載っているか、その割合はいくらか
  • 修繕積立金を分けて積み立てる規定: 全体と一部に分けているか、会計を分けているか
  • 額の決め方: 規約の本文や別表に額や単価が書かれているか、総会の決議で決める形か(標準管理規約では、管理費等の額は総会の決議事項です)

最後の点は特に重要です。額が規約の本文や別表に書かれていれば、額を変えることは規約の変更になります。総会の決議で決める形なら、額の改定は普通決議の議案になるのが一般的です(標準管理規約では、総会の議事は原則として出席組合員の議決権の過半数で決します)。ただし、負担の割合そのものを変える改定は、次の章の話になります。どちらなのかで、総会の準備がまるで変わります。

単価の差を設ける・変える時

住戸と住戸以外の区画の間に、新たに単価の差を設ける。あるいは、いまある差を広げたり縮めたりする。そうした議案は、規約の定めによっては規約の変更が必要になります。

規約の変更は、区分所有法31条1項の特別決議です。2026年4月1日に施行された改正で、決議の数え方が変わりました。いまは、区分所有者と議決権の各過半数が出席する集会で、出席した区分所有者とその議決権の各4分の3以上の賛成が要ります(規約で出席の割合を引き上げている場合は、その割合)。

同じ項には、もう一つ大事な定めがあります。

この場合において、規約の設定、変更又は廃止が一部の区分所有者の権利に特別の影響を及ぼすべきときは、その承諾を得なければならない。

住戸以外の区画の区分所有者は、たいてい少数です。多数決で決まる仕組みだからこそ、少数の側に特別の影響が出る変更には、本人の承諾が要るとされています。何が「特別の影響」に当たるかは、変更の必要性や合理性と、その区分所有者が受ける不利益を比べて判断するとされており(最高裁平成10年10月30日判決)、少数の側に不利な変更がすべて当たるわけではありません。

財布を分けている組合には、もう一つ定めがあります。一部共用部分だけに関わる事項(区分所有者全員の利害に関係しないもの)を区分所有者全員の規約で定めたり変えたりする時は、その一部共用部分を共用すべき区分所有者の4分の1を超える人、またはその議決権の4分の1を超える議決権を持つ人が反対すると、規約の設定や変更はできません(31条2項)。

どの場面でどの手続きが要るかは、規約の書き方と、差を付ける理由によって変わります。記事で一律に答えられるものではありません。迷ったら、議案にする前にマンション管理士や弁護士などの専門家に確かめてください。

理事会としてできるのは、差の理由を説明できる形にしておくことです。複合用途型の標準管理規約のコメントは、全体の費用を住戸と店舗に按分する時、費用の項目ごとに「費用発生の原因」を考えるとしています。財布を分けていない組合でも、どの工事がどの区画のためのものかを工事の項目ごとに整理しておけば、区分所有者に説明する時の材料になります。

長期修繕計画にも住戸以外の区画を入れておく

規約で負担の決まり方を確かめたら、その前提を長期修繕計画にも映しておきます。住戸以外の区画は数が少ないぶん、計画を作る時に抜け落ちやすいからです。

確かめたいのは次の3つです。

  • 収入: 修繕積立金の収入に、住戸以外の区画の分が入っているか。住戸以外の区画の分も同じ修繕積立金に入る組合で、住戸の分だけで収入を見積もると、計画の残高は実際より少なく出ます。
  • 面積と単価: 収入を計算する面積に住戸以外の区画を含めているか。含めるなら、その区画の単価で計算しているか。単価が違う区画があるのに、住戸の単価を建物全体の面積にかけると、収入は実際の額と合いません。
  • 支出: その区画のためだけの共用部分(出入口や設備など)の工事があれば、計画の工事の項目に載っているか。財布を分けている組合なら、どの財布から出す工事かも。

計画から区画が抜けたまま改定の議案を出すと、総会で「この区画はどうなるのか」と問われた時に、計画から答えられません。その答えを用意しておくには、計画を作る段階で区画を入れておくのがいちばん確実です。

総会資料では区分ごとに並べる

住戸以外の区画のあるマンションで修繕積立金を改定する時、総会資料で気を付けたいことは3つです。

  • 区分ごとに現行と改定後を並べる。改定しない区分も「据え置き」として書く。
  • 差の根拠を添える。規約のどの条文に基づく額か、按分をどう考えたか。
  • 国土交通省の目安との比較は参考にとどめる。

住戸以外の区画の区分所有者は、自分の行を見比べる立場にいます。住戸の改定額だけが並び、自分の区画が書かれていない資料では、「うちはどうなるのか」という問いに、資料の上で答えられません。据え置くなら据え置くと書く。それだけで、無用な不安を一つ減らせます。

目安についても一言添えます。国土交通省「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」の目安は、主として区分所有者が自ら居住する住居専用のマンションの事例(366事例)から算出された値です。ガイドライン自身も、目安の範囲に収まっていないからといって直ちに不適切と判断されるわけではないとしています。住戸以外の区画を含む建物全体の単価を目安と並べる時は、その前提を資料に書いておくと誤解を防げます。

SOLCUBE Cloud で区分ごとの単価を試す

住戸以外の区画のあるマンションで修繕積立金の改定案を比べる時は、区分ごとの数字を並べて見るところから始まります。

SOLCUBE Cloud では、物件設定で住戸以外の区画(店舗・事務所・専有部分の駐車場など)の面積を種類ごとに入れると、シミュレーターで区分ごとの修繕積立金の単価を使えます。

  • 区分ごとに、現在の単価と改定の予定を設定できます。住戸だけを改定する、駐車場だけを改定する、といった計画も組めます。
  • 修繕積立金の収入は、区分ごとに「単価 × その区分の面積」を計算して足し合わせます。
  • 総会資料(Word)の議案と別紙3 も、区分ごとの単価で計算します(出力は Standard 以上のプラン)。
  • 単価の差がある計画では、総会資料を出す画面に、規約の確認を促す表示が出ます。

区分ごとの単価は、1つの修繕積立金の中で区分ごとに単価を分けて計算する作りです。複合用途型の標準管理規約のように、全体と住宅一部・店舗一部に分けて積み立てる会計は扱いません。財布を分けている組合では、全体の計画の収入の見通しをつかむ用途でお使いください。

詳しい使い方はご利用ガイドにまとめています。

数字の前に規約を読む

住戸以外の区画のあるマンションでは、修繕積立金の話はいつも二段構えです。いくら必要か。そして、それを誰がどう負担するか。

前者は計算で答えが出ます。後者の答えは、規約に書いてあります。規約に書かれていなければ、規約をどう定めるかという合意形成の話になります。

改定の数字を作る前に、まず規約を開く。遠回りに見えても、住戸以外の区画のあるマンションでは、それがいちばん確かな進め方です。

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