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修繕積立金の値上げは、総会「当日」には決まらない ~ 合意形成の8つの工程

2026-09-08

私が理事を務めるマンションで、修繕積立金の値上げを総会に諮ったことがあります。

総会の多くでは、事前に委任状や議決権行使書で意思表示を済ませ、当日は出席しないケースがよく見られます。ほとんどの議案はそれで承認されますが、このときは、事前の委任状や議決権行使書だけでは可決ラインに達しませんでした。議案の可否は、当日出席した参加者の議決に委ねられることになったのです。

当日は、反対意見を持つ参加者が目立ちました。理事会側の説明も、十分ではありませんでした。結果は否決です。

こういう話は、理事会をやっていると珍しくありません。

でも、原因を「総会当日の説明が下手だった」に求めると、たいてい次の総会でも同じことが起きます。総会は、合意形成の最後の1コマに過ぎないからです。

「当日」に決まらない理由

総会での決議は、その日の1回のイベントに見えます。でも実際には、そこに至るまでに積み上がった工程の結果でしかありません。工程のどこかが抜けていれば、当日にどれだけ丁寧に説明しても、議案は通りません。

私は理事として値上げ議案に関わる中で、合意形成を精神論ではなく工程の問題として捉えるようになりました。今は、次の8つに分けて考えています。

合意形成の8つの工程

  1. 現状把握。修繕積立金が足りているのか、いつ足りなくなるのかを、数字で共有する
  2. 論点抽出。値上げに対してどんな反対が出うるかを、事前に洗い出す
  3. 案の比較。一発の提案ではなく、複数案を並べて選べるようにする
  4. 個別化。「うちはいくら上がるのか」を、住戸ごとに示す
  5. 意見収集。賛否を聞く前に、懸念を集める
  6. 議案化。決めた内容を、議案書として正しく書く
  7. 決議。総会で、実際に決を採る
  8. 実行追跡。可決した後、決めたことが実行されているかを追いかける

こう並べると、総会(⑦)より前に6つの工程があり、後にもうひとつあることが分かります。多くの理事会が力を注ぐのは③④あたりまでで、②の反対意見の想定、⑤の懸念集約、⑧の実行追跡は手薄になりがちです。

私自身、これで苦労した経験があります。修繕積立金を1平米あたり53円から252円へ引き上げる議案を、総会に付議したときのことです。

「値上げが急すぎる」「根拠や説明が不十分だ」という声が上がり、結果は否決でした。正確には、議決権の票数は条件を満たしていましたが、頭数があと1人足りませんでした。

否決の後、検討会を開き、長期修繕計画を改めて策定し、均等積立案と段階増額案を比較するアンケートで意見を集め、説明会も開いた上で、もう一度総会に付議することにしました。②論点抽出、③案の比較、⑤意見収集を、本来は先に済ませておくべきだったのです。

SOLCUBE Cloudが支えられるのは、まだ一部

この8つの工程のすべてをSOLCUBE Cloudが支えられるわけではありません。今できているのは、①現状把握と③案の比較のところです。

建物の情報を入れれば、その場で30年分の収支をシミュレーションできますし、手元にある計画をアップロードして今の状態を診断することもできます。値上げ幅や増額の時期を変えた複数のパターンをプロジェクトとして保存し、見比べることもできます。

理事会のメンバーで同じ画面を見ながら、同じ数字を確認できますし、その結果は理事会資料や総会提出書類として使えるPDFやExcelにそのまま出力できます。

⑥議案化そのもの、つまり議案の要領を書き起こし、決議事項として整える作業は、今のところ人の仕事です。SOLCUBE Cloudが出せるのは、あくまで数字とグラフの資料までです。②論点抽出、⑤意見収集のような、人と人との間で言葉をやり取りする工程についての機能はまだありません。ただ、①の数字がはっきりしていないと、②以降の話し合いはそもそも成立しません。土台の部分から、私は関わっています。

次回予告

この記事から始まる連載を「合意形成の技術」と名付けました。次の記事では、①現状把握を掘り下げます。「積立金が足りない」とは具体的にどういう状態を指すのか、数字で現状を共有するところから始めます。

あなたのマンションの理事会は、この8つの工程のうち、どこが一番手薄になっていますか。

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